Happy christmas with you
【夏海side】


「じゃ、行ってきます。」

「行ってらっしゃい、お姉ちゃん!」

「今日あいつとデートなんでしょ?お母さんたちもういないし、戸締りはちゃんとしてから家出てね?」

「はーい!お姉ちゃんも卒論頑張って!」

「…そう、ね。」


ちょっと歯切れ悪く返事をして家を出る。空気が冷たくて、手袋をした手をコートの中に突っ込んでさらに暖を取る。


…終わらせ、てしまいたい。
もう長いこと会っていない気がする。音沙汰もない。多分私に気を遣っているんだとは思うけど。でもらしくないから、余計に気にかかる。


「…メールがあんまり好きじゃないって言ったから、かなぁ…。」


だからメールをしてこないのだろうか?
でも、申し訳ないけれど私だって自分からメールをするほどは暇じゃない。
…だけど、メールが来たらならば返す、のに。…なんて、こんなことを思う思考が自分らしくなくて笑える。今はそんなことを考えてる場合じゃない。


「終わらそ、今日で。そしたら…。」


ちょっと驚かせてあげようか。それにそろそろ…


「私も会いたい…し。せっかくのクリスマスイブだし。」


小夏だって浮足立っていた。…ちょっと心配ではあるけど、そこの心配をしているほどの暇だってない。


「よしっ!やるぞー!」


今日中に完成させる。そして明日論文を提出する!
そう心に堅く誓って、私は大学へと歩みを進めた。

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