Happy christmas with you
* * *


夏海さんと一緒にいる時間はあっという間に過ぎていくのに、一人だとどうしてこんなにも時間が進まないのか。
これはもしかしたら俺が卒論のテーマにして考えるべき問題なのかもしれない。


「…つまんね…。」


さっき、間違って浮かれバカ(弟)に会ってしまった。トイレにあのタイミングで行こうと思った自分を呪いたい。


「夏海さん…。」


ベッドの中でうずくまって、夏海さんのことを考える。
前にデートの帰り道に雨にやられて、ずぶ濡れになったからってことで俺の家に来てくれた日がぼんやりと浮かんだ。
…あの日、夏海さんのこと襲いかけたんだよな、俺。だってシャツ一枚の夏海さんなんて…可愛すぎてどうなる事かと…


「ってやべぇ…余計虚しくなってきた…。」


考えれば考えるほど虚しくなるのは分かっているのに、今日はやけに夏海さんのことが浮かんでくる。


告白した燈祭りのこと、繋いだ手の暖かさ、キスした時にほんのりとあがる息と赤く染まる頬、初めて抱いた時の表情の一つ一つが鮮明に思い出せる。


「…だめだって、まじ。これ以上思い出したら辛いっつの。」


自分の思考回路をどこかで切ってしまいたい。考えれば考えるほど辛いのは分かってるんだ。それなのに止められない。


…抱きたいなんて言わない。言わないから、だから。


「…会いたい…。今日、会いたい。」


今日も夏海さんからはメールも着信もない、存在意味のない携帯電話が目に入る。


「役立たず。」


そう呟いて、俺は枕に突っ伏した。
携帯電話は一応バイブにして枕元に置く。…鳴るはずはないのだけど。

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