Happy christmas with you
「な…つみさ…。」

「メリークリスマス、風馬。ずっと連絡できなくてごめんね。」


にっこりと笑う夏海さんに、心臓が異常なくらいに音を鳴らす。
夏海さんの目の下にあるクマが、忙しかったことを物語っている。


「そんな…あの、卒論は…。」

「さっき仕上げて印刷したの。だから明日提出しようかなって。それで…。」

「会いに…来てくれたんですか?」

「…うん。私が、会いたかったから。」


ほんのりと赤く染まる頬に、自然と手が伸びた。
その頬は冷たくて、そしてなんだか少し痩せたような気もする。


「風馬、手…暖かい。」

「ずっと室内にいましたから。」

「そっか。」


手袋を取った夏海さんの掌が俺の手の甲に重なる。その手は頬よりも冷たい。


「手袋の意味、あんまりないじゃないですか。」

「…だって、手、どうしてもだめなの。冷たくなっちゃうの。」

「そう…ですか。じゃあ、暖まっていってください。どうぞ。」

「うん。ありがとう。」


夏海さんの冷たくなった手を握って、ドアを開ける。
…サンタクロースは実在するかもしれないなんて、ちょっと本気で信じかけそうだ。

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