Happy christmas with you
「待って。それがどうして子どもっぽいに繋がるの?」


夏海さんがゆっくりと俺の腕を解いて、俺の瞳をじっと見つめる。その目から逃れられないことを俺は知っている。


「夏海さんは俺がいなくてもやるべきことをちゃんとやって、それでこうして卒論終わらせて、それでこんな風に会いに来てくれて。
…どんだけかっこいいんですかって話ですよ。俺は全然かっこよくない。子どもみたいに寂しがって拗ねて…そんな感じでした、ここのところずっと。」

「え、そ、そうなの?じゃあメールでも電話でもくれれば…。」

「だって4年生にクリスマスなんてないって言ったの夏海さんじゃないですか!」

「確かに言ったけど、それは自分を戒めるためでもあって…。」

「…じゃあ、メールしたら返事くれたんですか?」

「…うん。」

「電話したら、電話出てくれたんですか?」

「…出ます。」

「会いたいって言ったら時間作ってくれたんですか?」

「…長い時間は取れなかったと思うけど、ご飯くらいなら。」

「なんで言ってくれなかったんですか。」

「…集中したかったのは確かだったから。あと、自分へのご褒美をぶら下げておこうって思って。」

「ご褒美?」


夏海さんがちょっと気まずそうに口を開く。


「卒論終えたら風馬と心置きなく会える、自分から連絡していいって自分で勝手に決めてたの。好きなもの断ちして頑張って、それで終えたらご褒美。」

「…ご褒美、俺ですか?」

「そう。」


少し照れた表情で、でも真っすぐに夏海さんがそう言った。
…なんだよ、それ。なんか…


「…嬉しいけど、なんかバカみてー…俺。」


…妙に物分かりの良いフリなんてするもんじゃない。そんなの自分を苦しくするだけだ。今日1個、学んだ。

< 42 / 64 >

この作品をシェア

pagetop