Happy christmas with you
「でも夏海さんがクリスマスなんてないって言ったんですよー。」

「…それはその、言うまでは確かに本気でそう思ってたの。」

「…どういう意味です?」

「だから、性格上締め切りギリギリまでやっちゃうだろうし、だったら変に期待させるのはちょっとなって思ったからああいう風に言ったの。
…でも、風馬、…私が思っていたよりもずっと悲しそうな顔したから…。」

「……顔に出てました?」

「思いっきり。傷付いたって顔してた。」

「うわー…そういうとこガキだなぁー俺。」

「でも、傷付けたのは…多分本当だから、謝ります。あの時の言い方、私すごく悪かった。だから…ごめんなさい。」


夏海さんの頭が俺の目の前ですっと下がる。


「それと、勝手に風馬断ちしてごめんなさい。何も連絡しなくてごめんなさい。…寂しい想い…させた?」

「そりゃあもう…寂しかったです、結構。」

「そっか。だったらそれも、ごめんなさい。でも…寂しかったのに待っててくれてありがとう。」


顔を上げた夏海さんの表情は笑顔だ。優しくて温かい、いつもの笑顔。


「…あの、夏海さん。」

「なに?」

「夏海さんを充電させてください。」

「え…?」

「…ぎゅってしてもらっても、いいですか?」

「え、あ…い、いいけど…。
えっと…こ、これでいいの…かな…?」


ゆっくりと伸びてきた夏海さんの腕が俺の背中に回る。
遠慮がちに込められた力が少しずつ、俺と夏海さんの距離をなくしていく。

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