Happy christmas with you
「まだ、クリスマスイブ…?」

「うん。10時をちょっと過ぎたくらいだから、残り2時間くらいはクリスマスイブだ。」

「…ショウ。」

「なに?」


クリスマスイブにはサンタクロースに願いを届ける。
…サンタクロースはいるけれど、子どもじゃなくなったあたしたちに、本物のサンタクロースは訪れない。だから…。


「あたしがショウのサンタになる。…だから、欲しいものを教えて。」

「あと2時間でくれるの、欲しいもの。」

「サンタさんは今日の夜から明日の朝にかけて枕元にプレゼントを置いていくのが仕事でしょ?あと2時間じゃないよ。」

「…まぁ、そうとも言えるかな。欲しいもの、何でもいいの?」

「この世にあるものなら。あ、なるべく低価格。」

「低価格…かぁ…。俺の本当に欲しいものは…サンタさんに頼んで貰うようなものじゃないからなぁ…。」

「なに?欲しいものって。」

「…夢の全部。」

「は…。」

「それは自分で手に入れるから。あ、じゃあこうしよう。明日、三食夢のご飯が食べたい。」

「え?そ、そんなのでいいの?」

「うん。それがいい。そしたら明日はずっと一緒に居られるだろう?」


優しく、本当に優しくショウが微笑む。あまりにも叶えるのが簡単なプレゼントにたったそれだけでいいのかと思ってしまう。


「…それじゃあ、足りないよ。」

「足りない?何が?」

「あたしがショウに貰ってるものに…追い付かない。」

「そんなに多くないよ、俺があげてるものは。」

「そんなこと…ない、もん。」


そんなこと、ない。あたしは充分過ぎるほどの想いを貰ってる。
…だから、返したい。

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