戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
「…………」
目覚めた私は、しばらく天井を眺めていた。
はて、不思議な夢を見た。
予知夢の類だろうか。
それにしては、何の意味もない……
ただあの青年と少女がいるのを見ただけだ。
彼らの会話すら、聞こえなかった。
こんなことは珍しい。
意味のない夢を見ることはあったが、それとはまた違う。
何を予告するわけでもない彼らを、私はよく知っているような気がするのだ。
「一人は、忍の岡崎一族……よね」
あの特徴は、知る者が見れば、すぐにそうとわかる。
「あの少女は……」
誰かに似ている気がするのに、やはり思い出せない。
「しょうがないか」
深い意味があるのなら、またいつか夢に見るだろう。
私は体を起こし、ついでにぐっすり眠っている薫をたたき起こす。
さあ、
今日も【夢見姫】としての一日が始まる。