戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】


わざと起こすのは、やめてあげよう。


私はしばらくその顔を見つめたあと、ふと彼の頭の上に視線を向けた。


そこには丁寧に、彼が持っていた刀と脇差がかけられている。


おいおい、誰だこんなことをしたのは。


こいつが起きたとき、錯乱して振り回したらどうするんだ……


音羽家の者は皆、優しいというか、お人よしというか、世間知らずだ。


私は呆れながら、刀を手に取る。


それはずしりと、感じた事のない重みを両腕に与えた。



「重い……」



よくもまあ、こんなものを振り回せたものだ。


好奇心で、ぐ、と力を入れる。


しかしその刀身は、鞘から出てこない。


単純に、力が足りないのだ。


しょうがない、やめよう。


とりあえず誰か呼んで、しまわせておこう。


そう思って、刀を胸に抱くようにした、その時だった。


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