戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
「ここは、戦とは関係のない中立の地。
音羽家の屋敷です」
「音羽家……」
「ご存知ありませぬか」
「はぁ、なにぶん下っ端なもので」
落武者は気まずそうに、ぽりぽりと頭をかいた。
「あ、申し遅れました。
拙者は国府博嗣(こう・ひろつぐ)と申します。
貧乏御家人の三男です」
そんなことまで聞いてないけども。
まあ、せっかく名乗ってくれたのだから……
「私は、登喜(とき)。音羽家当主を務めております」
「えっ、あなたが当主様?」
博嗣は素直に驚いた顔をした。
そうよね、普通の武家じゃあり得ないものね。
こんなに若くて可愛い姫が(何か文句ある?)当主だなんて。
「ええと、姫様、ご冗談はおよしになってください。
助けてくださったお礼は言います。
この通りです。本当のことを教えてください」
そう言うと博嗣は、私に向かって丁寧に頭を下げた。