戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
「姫様、これでは他の姫様や若様がつまりませぬ。
全員で鬼ごっこなどはいかがでしょうか」
「うん、いいよー。博嗣弱いから、つまんないし」
散々付き合わせた篤のその台詞には、思わず笑ってしまった。
「篤姫様は、お母上そっくりでございますな……」
「何か言った?」
「いえ、空耳でございましょう。
さ、拙者が鬼をやりまする。
皆様、隠れなされ!」
博嗣が言うと、一番下の息子まで娘に手を引かれ、嬉しそうに駆けていった。
「ふう……」
子供達の姿が見えなくなると、博嗣は私のいた縁側の隅に腰掛けた。
「何をしてるの。早く探してやってよ」
「わかっております。
ただ、隠れることも楽しみの一つ。
あまりに早く見つけてしまっては、つまらないでしょう」
そんなこと言って、休みたいだけなんじゃないだろうか。
あらあら、汗だくで……墨が目に落ちそう。
私は手ぬぐいを取り出し、そっと彼の額をぬぐった。