戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
……あぁ、また耳鳴りがする。
誰かが、敷地内に侵入したんだわ。
裏の森の木々が、うるさく騒いでる。
私はむくりと布団から起きると、すぐに着物を羽織った。
どうせ、出かけることになるわ。
たった今、そんな夢を見てたもの。
……ほら。
帯を締めた瞬間、誰かが廊下をドタドタと走ってくる音が聞こえた。
物音に気づき、隣で寝ていた侍女の薫は今頃飛び起きた。
「あれぇ、姫様。
もしかして、何か予言されました?」
薫は寝ぼけた声のまま、フニャフニャの手ですずり箱を引き寄せた。
この子、私の夢の記録係だっていうのに、大丈夫かしら……
私は耳鳴りからきた頭痛を抑えた。
薫のボケっぷりからきたと思うと腹が立つから、そう思おう……。
「違うわ。侵入者よ」
「えっ!」
その時、ちょうど部屋の前で足音が止まった。
「姫様!夜分に恐れ入ります!」