戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
「ねえ、博嗣」
「はい、姫様」
「あなた、先日の戦いで、西条の国の剣術指南役の鳴海って男を見なかった?
二刀流で、こちらに逃げてきたそうなんだけど……」
「え、あ、いえ……実は私も西条の出ですが、
必死で逃げていたし、夜だったもので何も見えなくて……」
「まあ、役立たず」
その一言に、博嗣はずしーんとつぶされたようだった。
その背中をさすりながら、薫が口を出す。
「姫様、大丈夫なんでしょうか。
お武家様に、あのような対応をして」
その言葉は、そこにいる全員の気持ちを代弁したようだった。
皆、不安そうな顔でこちらを見ている。
「これまでも、戦に関する以来は断ってきたでしょう。
今回も、大丈夫よ」
私は皆を励ますため、つとめて明るく言った。
しかし事態は、そう簡単にはおさまらないのであった。
数日後、豊橋右京から、文が届いた。
それは、夢見姫である私を、豊橋右京の側室にしたいとの申し出だった。