戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
夢見姫の願い
さて、どうしたらいいものか。
文が届いた翌日、東雲からの使者が、
莫大な贈り物を担いで音羽家へとやってきた。
前面衝突はしてないと言えど、戦の途中には違いない。
豊橋もそう何度も城を空けるわけにはいかないのだろう。
「姫様、どうしましょう……
あの人達、全く帰る気配がないんですけど~……」
門まで使いに行かせた薫が、泣きそうな顔で戻ってきた。
「お母様、お嫁に行ってしまうの?」
「嫌よお母様、行かないで」
子供達までこの異常事態は聞こえてしまったらしい。
彼らは私の着物をつかみ、歩みを妨げた。
「大丈夫、お母様は誰のお嫁にもなりはしないわ」
「本当?」
「ええ、本当よ」
にこりと微笑んでやると、子供達は幾分か安心したようだった。
「博嗣、子供達を頼むわよ。
私はちょっと行って、話をしてきますから」
「姫様……」
博嗣は、末の息子を抱っこしたまま、こちらを心配そうにみつめる。
私はその視線を振り払うように、背を向けた。