戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
「ついてきなさい、薫」
「ふわぁ~ん」
「いちいち泣かないの!」
困ったものだ。
子供が五人もいる二十四の年増を側室にしたいなどと、
戯言も大概にしてもらわねば。
どうせ、私の力を手に入れるのが目的なのだろう。
「そうではありませぬ。
豊橋様は、姫様のお美しさと勇気にお心を奪われたそうで……」
使者たちは汗だくで説明する。
美しいと言われて嫌な気はしないが、
それを鵜呑みにして嫁に行くほどバカではない。
「申し訳ありませぬ。
私は神に仕える尼や巫女と同じ。
俗世の殿方と結婚するわけにはいかぬのです」
「はい、存じております。
そこは豊橋様も承知で、力を失うようなことは絶対にしないとおっしゃられて……」
「ほら、やはり私本体より、夢見の力が欲しいのではないですか」
「あ……」
使者達は皆青ざめたまま、帰っていった。