戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
見回りの者の声だ。
「良い。わかっている。
私もすぐに向かう」
「ええ、またですか~?
やっぱりあたしもついていかなきゃ、ですよね……」
薫が情けない声を出す。
十四になったばかりの若いこの娘は、暗闇が苦手なのだった。
「当たり前でしょ。
お前は私の護衛兼記録係なんだから。
早く着替えなさい」
「ふわ~ん……」
思わず、ため息が出た。
私だって、こんな夜中に出かけたくないわよ。
戦国の乱世になって、この音羽家も落ち着かなくなってしまった。
現在、この音羽家の敷地をはさんで、ある二つの国がお互いの領地の支配権を巡って、争っている。
そんなことに、いったい何の意味があるのだろう。
中立の立場をとっている音羽家に迷惑かけないでよ。
誰か知らないけど、私の睡眠を邪魔した罪は重いんだから!!