戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
つぶやいた声は聞こえただろうか。
見上げた博嗣の顔は、赤くはなかった。
その目には、ただ。
私に対する慈しみがあった。
「……しっかりなさってください。
今そんなことをしても、何にもなりませぬ」
「……博嗣……」
「戦いましょう、姫様。
拙者があなた様を守ります。
そして、全てが片付いたら……」
博嗣はそこで、一旦言葉を切った。
深く息を吸い、
奥二重の瞳が私を見つめる。
「……その時は、あなた様の願い、拙者が叶えましょう」
「……ひ、ろ」
名前を呼ぶ声は、途中で失われた。
それは彼の唇に、吸い込まれていったのだ。
それが接吻なのだとわかったときには、私はより強く、彼にしがみついていた。
産まれてはじめての、口づけ。
それがこんなに温かくて、幸せなものであることを、私は想像した事もなかった。