戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
「……もう朝ね。みそぎに行くわ」
「はい、姫様」
薫は着替えを用意して、共に浴室へ向かう。
いつでも清浄な水が張られている、みそぎ専用の浴室だ。
着物を脱ぎ、襦袢一枚でそこへ入る。
浴室の中は、たとえ侍女の薫であろうとも、他人は入ることはできない。
「あー、もう、本当になんなのよ……」
わけがわからないのに、異常に悲しい夢だった。
そして、なんで最後に博嗣が出てくるのよ!!
おかげであの青年を逃がしたじゃないの。
……いや、夢の中の人間に話したり、何かをしたりは出来ないけれど。
「……もう、考えるのやめよう……」
きっと先日、博嗣とあんなことになってしまったからいけないのだわ。
あれから数日、博嗣はそれまでと同じように、何もなかったように振る舞い続けていた。
ふと二人きりになったりすると、それはそれは微妙な空気が流れる。
いい大人二人なのに、まるで元服前の子供のお見合いみたいだった。