戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
「ええい!」
少し、頭を冷やそう。
博嗣は優しいから、あの場をおさめてくれただけだ。
私はまだ夢見姫なのだ。
身を清め、今日も勤めに励むのだっ!!
がっと桶をつかみ、浴槽を覗き込んだ瞬間……
私は、あることに気づいた。
そうだ。
あの夢の少女、誰かに似ていると思っていたのだ。
白い肌に、黒目がちの大きな瞳に、長いまつ毛。
形はいいが主張しすぎない鼻と、小さな花弁のような唇……。
それは化粧を施す前の自分に、そっくりだった。
あの少女と同じような顔が、水面の中でゆらりゆらりと揺れていた。
案外、自分のことは気づかないものだ。
こんなに近くに、彼女はいた。
すると、彼女は……未来の音羽家の姫か?
再び思案をめぐらせていると、突然浴室の戸が乱暴に叩かれた。
「姫様!姫様!」
「何?どうかしたの?」
「姫様ぁ!敵襲でございます!」