戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
……死んでいるんだろうか。
それならまだいいけど、生きていたら面倒だ……。
戦で狂った落武者は、誰彼構わず攻撃してくることがある。
彼らを落ち着かせるのは、こちらも命がけだ。
今までも何人も、そうして郷へ返してやった。
死人は申し訳ないが、勝手に弔わせてもらう。
彼ら全員の身元を割り出すのは、不可能だからだ。
最初は心を尽くして彼らの対応をしていたが、今はやめた。
それらの作業はなかなか過酷で、こちらがおかしくなりそうだったからだ。
とにかく私は、ゆっくりと落武者に近づいた。
どうやら、気を失っているらしい。
かすかに聞こえる規則的な息の音が、それを証明していた。
「もし、そなた……」
声をかけるが、やはり反応はない。
落武者はボロボロの雑巾みたいに汚かった。
具足は所々穴が開いているし、肌は血や泥で真っ黒。
髪は結われていたが、かろうじて紐が残っているという程度だった。