戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
とにかく、本当に西条の国の剣術指南役だった博嗣は、
東雲の国との戦いのあとの雑務に追われていた。
「姫様、お久しぶりです」
「……おかえりなさい」
久しぶりに帰ってきた博嗣は、疲れた顔ひとつせず、
やはりにこにこと笑っていた。
あの戦いの後、二人で会えるのは初めてだった。
部屋にあるのは蝋燭の灯りだけ。
子供達は、博嗣の兄上の子供たちと大いに遊び、疲れて寝てしまった。
「ああ、いいですねえ、『おかえりなさい』って。
本当の奥方様みたいだなあ」
博嗣はしまりのない顔で笑った。
今でも、この男があんなに強かったのは夢じゃなかったかと思う。
「ってあんたね、今日こそは色々説明してもらいますから。
よくもだましていたわね」
「はい、もちろん。
今日はあなた様と話をするために、戻ってきたんですから」