戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
「拙者は剣の腕を見込まれ、若い人達に剣を教える役をしていました。
しかし、本当に人を斬ったのは、戦になってからが初めてでした」
ぽつりぽつりと、博嗣の言葉は一粒ずつ落ちていく。
「父から受け継いだ、名刀『市道』を手に、
拙者は初めて人を斬りました。
実戦と竹刀や木刀は全く違うんです。
当たり前のことですが、人を斬って初めて、それを実感しました」
博嗣は置いた刀を見た。
「戦になれば、人を殺めるのが拙者の役目。
それがお世話になってきた国や領主様のためと思い、働いてきました。
しかし……」
「しかし?」
「途中で気づいてしまったのです。
自分は狂いはじめていると」
連日連夜、敵の血で塗れてきたのであろう両手を、博嗣はじっと見つめた。