戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】


「何を……」


「この前言ったでしょう。

夢見姫の力をなくすなんて、愚かだと笑われるわ。

隠そうとしても、すぐに知れ渡る。

あなたが一夜だけのつもりだろうと、

人はずっと、あなたのことを笑うのよ。

利用できる力を捨てた、愚かな武士だと」


「一夜だけなんて……

そんなことは思っておりませぬ。

拙者は姫様さえ良ければ、お子様共々、一生面倒を見るつもりでおります」


「良くないわ。

本当にバカね。

力を失った夢見姫なんて、何の価値もないのよ。

年増で、子連れで……」



言っているうちに、涙が溢れた。


自分の無力さが悲しかった。


博嗣のまっすぐな心が胸に刺さって、痛かった。




「あなたの出世の妨げになることはあっても、

助けになることはひとつだってないのよ!

こんな惨めなこと、言わせないでよ!

お願いだから、もうわかって……!」


< 80 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop