戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
目の前がくらくらした。
篤姫、いったい何をどこで覚えてくるのか……。
「豊橋の嫁になるくらいなら、拙者にあげた方がマシ、と申されておりました。
ご姉妹ご一同様、同意見だそうで」
「あの子……
こっそり源氏物語か何か読んだのかしら……」
「はい、そのようで」
すっかり涙がどこかへ行ってしまった私の前で、
博嗣は赤い犬の顔でしっぽを振る。
「……あなたは本当に、バカね……」
「はい、大バカですから。
拙者は誰に笑われようが、気にしませぬ」
「出世できないわよ?」
「かまいません」
犬の顔が、一瞬で男の顔に変わる。
そして、その大きな手が私の頬を包んだ。