不細工なあたし
力強くそう言った早紀の瞳はまっすぐで、真剣。
きっと早紀の言葉は本心なんだろう。
その真剣さに少しだけ心がグラついたけど、あたしは首を横に振った。
「…とにかく。あたしはこのままでいいの。どうしてもしろっていうなら、行かないから」
「えぇー…」
早紀はまだ何か言いたげだったが、やがて観念したように息を吐いた。
「…わかった。行ってくれるだけありがたいんだもんね。ここは我慢する…」
「うん、ありがとう」
「じゃあ1時間後に迎えに来るから、準備しておいて。さすがに部屋着から着替えるくらいはしてくれるんでしょ?」
「仕方ないわね」
「うん…。そのスウェットで現れたらいくらなんでもひかれるからね」
いくらあたしだって、部屋着で出られるのはアパートのすぐ隣のゴミ捨て場くらいのもんである。
早紀ははあ、とため息を吐き、あたしの部屋から出て行った。
ここはあたしのアパートの部屋で、早紀は同じアパートの、あたしよりひとつ上の階に住んでいるのだ。
「……さて、と」
とりあえず、クローゼットを開けた。
ひらひらな服は似合わない自信があるので、あるのはカジュアルで色も地味なものばかり。
本当は、ピンクも水色もオレンジも大好きだけど、見苦しいのはよろしくない。
そう思って、無難な黒や茶色に走ってしまうんだ。