【中編】『Love Step番外編』星に願いを
「彼女は龍也を捨てた訳でも蒸発した訳でも無い。」
一臣さんの声はとても静かだった。
その事がこれから彼が語ろうとしている事の重さと、哀しさを物語っていると本能で感じた。
その瞳はこの先を語ってもいいのかと龍也先輩に問い掛けている。
龍也先輩は決意を秘めた目で一臣さんを見つめ返し、黙って頷いた。
「彼女は…忘れてしまったんだよ。龍也。」
耳が痛いほどの静寂がその声を凶器に変え胸を抉ってきた。
「…おまえの事も翔の事も。家族で過ごした幸せな日々も全て。」
「……忘…れた?どう言う事だ?記憶喪失にでもなったっていうのか?」
「ああ。いや…正確には少し違うな。」