【中編】『Love Step番外編』星に願いを
「…つまり、母さんは俺達の事を忘れて自分から逃げた筈の家に帰ったのか?」

「そうだ。彼女は翔やおまえと過ごした日々を何一つ覚えていなかったからな。」

「父さんは記憶をなくした母さんと会ったのか?」

「ああ、彼女が春日グループ総裁の娘だとわかったのは、俺のオヤジが見つけた経済関係の雑誌で取り扱っていた、雪さんと浅井グループ後継者、浅井 克巳氏との婚約を報じる記事からだった。
俺の父は翔を息子の様にかわいがっていたからな、さくらさんの事も娘のように思ってたんだ。
その記事を見つけたときは流石に動揺していたよ。
翔に事実を告げるべきかってね。」

一臣さんは2本目のタバコを加えて火をつけた。

ふうっと吐き出す煙がゆらゆらと漂って空気の膜を作っていく。

今聞いている話がすべて夢で、目が覚めたらいつもの通り龍也先輩の部屋にいると願いたいほどに、その話は余りにも事実として受け止めるには哀しすぎた。


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