【中編】『Love Step番外編』星に願いを
「…俺は父さんが死んでから天涯孤独の身だと思っていた。
今更血縁なんて欲しくは無いし、母さんを不幸にした一族なんてクソ喰らえだ。
俺が必要なのは聖良だけだ。
俺が春日の血を引いていようがいまいが何も不安に思うことなんか無い。」

龍也先輩は真っ直ぐだ。

泉原グループの世界を動かす事さえ可能な力も、春日家の残酷さも、一族の強固なまでの血の繋がりも…彼はまだ何も知らない。

だからこそ、彼が傷つくのでは無いかとあたしは恐れているのに…。

「先輩…あたしのママがパパと出逢って結婚した時、水谷のおじい様は理解のある方でママの幸せだけを祈ってくれていたから、反対はされなかった。
だけど、その結婚を大きく批判したのは春日家の大おじい様だった。
春日の大おじい様は既に引退していらっしゃるけれど、その発言力は絶大なんです。
ママを春日の家に嫁がせたいと考えていた大おじい様にとって、パパは邪魔者だったの。
ようやく一族から離れたこの土地で幸せになりかけた時、パパが事故で亡くなったのは、春日が仕掛けたものかもしれないとママもお兄ちゃんも思っている。」

「…まさか?」

余りの事実に龍也先輩が鼻白むのをあたしは悲しい目で見つめた。


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