短志緒
クリスマスイブがやってきた。
街が華やかな雰囲気に心を踊らせる中、私と健吾は飾り気のない建物の前で一旦足を止めた。
そして健吾が深呼吸したのに合わせて、乾燥した空気が白く濁る。
「なんか緊張してきた」
「緊張?」
「ここを出る時には、もう今までの俺じゃないんだなって思って」
「じゃあ、やめとく?」
私はじろりと睨み付けて手に持っていた封筒を風になびかせる。
このまま手を放せばどこかへ飛んでいってしまうだろう。
健吾は慌ててそれを取り上げた。
「やめないよ」
そして先に建物の中へ入っていった。
「あっ、ちょっと待ってよ!」
逃げるように先を急ぐ健吾。
ヒールのブーツでは分が悪い。
私が目的地にたどり着いたときには既に窓口に立っていた。