短志緒
とにかく、彼女は嘘をつく。
と言っても、俺につくのは大した嘘ではない。
見え見えでバレバレの、可愛らしいものばかりだ。
今日も夜に突然うちにやって来て、
「あれ、真咲。今日は来るなんて言ってなかったのに」
「マンガの続きが読みたかったから」
とぶっきらぼうに言った。
確かにうちにはいくらか集めているマンガがあるし、
彼女はパフォーマンス的にそれらを読む素振りを見せはするが、
真面目に没頭して読んだことはない。
いつでも俺の行動をちらちらチェックしては、
甘えるタイミングを図っている。
構ってほしいならそう言えばいいのに。
彼女は嘘つきというより、
素直じゃないだけだ。
「ねえ、由貴」
「ん?」
「飽きた。もう帰る」
ほら、来た来た。