短志緒
彼女が帰っていく姿を一目見ようと、
俺は窓から通りを眺めることにした。
窓を開けて、彼女が道に出るのを待つ。
彼女は思ったよりゆっくりとした足取りで現れた。
そしておもむろに携帯をいじり、耳へ。
「あかり……」
電話の相手は彼女の親友だった。
夜になると静かになる住宅街。
彼女の言葉は、かろうじて俺の耳に届いた。
……と思ったら、彼女は立ち止まってしばらく黙ってしまった。
「グスッ……」
……え?
「グスッ……」
鼻をすする音。
そして。
「……やっぱり由貴……もう私のこと好きじゃないみたい……」
子供のような、鳴き声混じりの弱々しい言葉。
俺はこの時、初めて自らの過ちに気が付いた。