短志緒
聞こえる。
彼女の本当の声が、ちゃんと聞こえてる。
「やだよ。絶対に離さない」
バカとか離せとか言いながら、
彼女の方こそ俺を離さなかった。
鼻声で精一杯の悪態をつきながら、
天の邪鬼な愛を叫んでいた。
彼女の8割は嘘で出来ている。
残りの2割も真実とは限らない。
だけど、嘘は真実の鏡であるともいう。
俺はただ、彼女の嘘を鏡越しに見てあげればいい。
そうすれば
彼女の8割が嘘で出来ていたって、
残りの2割が真実とは限らなくたって、
何の問題もないじゃないか。