短志緒
ある日の夜、彼女が突然俺の部屋にやって来た。
「5巻、読みたいの」
「どうぞ。入れば?」
彼女は少し照れた顔で俺の部屋に上がり込む。
マンガの棚から5巻を取り出し、
いつもならテーブルの前で読むのに、
今日は本を持ってベッドへ上がってきた。
寝転びながら読むつもりか。
……なんてね。
本当はわかっているのだ。
「真咲」
「何よ。読んでるんだから邪魔しないで」
「やだね。ほら、チューは?」
彼女は嬉しそうに応える。
「やめてよ」
と言いながら。
だから、今日も聞いてみよう。
「なぁ、真咲」
「なに?」
「俺のこと好き?」
「大っ嫌い」
この答えを聞くために。
fin.