短志緒
ということを焼酎片手に愚痴ったら、親友の佐藤碧に鼻で笑われた。
「瑛士ってさー、真奈美の前ではホント無力だよな」
「はぁ?」
無力ってなんだよ。
わけわかんねー。
「いつも振り回されてんのは瑛士の方じゃん」
「そんなことないって」
とは答えたが、今こうして愚痴を聞いてもらっているということは、それに近い状況なのだろうと自覚している。
「お前ら、中学の頃から力関係変わってないね」
「真奈美の方が上手ってことか?」
「当然」
何だよ。
また俺ばっかりが真奈美を好いてるみたいじゃんか。
恋愛は惚れた方が負けなどと言われるが、この店での再会以降、先に告白してきたのは真奈美の方なんだぞ?
納得いかない。
俺はブスッとしたまま酒を煽る。
この店はいつも平日なのに人が多い。
ガヤガヤした店内の音が、しばしの沈黙を埋めた。
新婚の碧を妻のいずみから拝借できたのは、いずみこそ真奈美との予定があったからである。
もはや旦那会と嫁会。
あっちはあっちで、俺の悪口など言っているにちがいない。