短志緒
それにしても、ここまで来るのは本当に大変だった。
特に生真面目で厳格な彼女の父親に取り入るまでにかなりの時間を使ってしまった。
初めて彼女の実家を訪問したのはもう4年も前のことだったか。
あの頃は互いに学生で、一緒に暮らすことさえ認めてはくれなかった。
学生のくせに羽振りのいい俺を怪しんで
「娘を騙すのはやめてくれ」
とか
「君のような男に似合うとは思えない」
とか、あからさまに嫌悪感をぶつけられていた。
彼女にも電話の度に
「別れなさい」
やら
「もっと誠実な男にしなさい」
などと吹き込んでいたようだし。
悔しかった俺はどんなに疎まれても月に一度は必ず実家に通って、
そのしつこさに根負けした彼女の親父がやっとまともに話を聞いてくれるようになったのは、
俺たちが卒業した頃だった。