短志緒

親父は解せない顔をして酒を飲んだ。

それでもやっぱり最後には

「君のような男に嫁にやるつもりはないがね」

と突っぱねられた。

彼女は親父にそっくりだ。

いつも不機嫌で無愛想で、なかなか笑わない。

俺はいつも考えていた。

彼女を笑顔にするにはどうしたらいいのだろう。

そしてそれと同じくらい考えていた。

彼を笑顔にするにはどうしたらいいのだろう。

そんなサービス業の根本のようなことばかり考えていたからか、

俺の店の経営は順風満帆だった。

それだけが唯一誇れることだったし、

「娘さんに不自由な思いはさせません」

という台詞の根拠でもあった。

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