短志緒
「別に」
ああ、どうしてこんな風にしか言えないのか。
もっと上手に笑って気の利いた言葉のひとつでもかけてあげられたら良かった。
せっかくのチャンスなのに。
無愛想にしかできないこんな俺にも、
彼女は笑顔を見せてくれた。
伝えたいことはたくさんあるのに
何一つ口から出すことができない自分がもどかしい。
でも、だから、きっと。
俺は俺なりに、無口で無表情で無愛想な俺なりに、
彼女に気持ちを伝えたい。
でも今は我慢だ。
まだまだ早すぎる。
今までは遠くから眺めているだけだったけれど、
勇気を出して自分から歩み寄ろう。
こんな風に思う日が来るなんて。
彼女の笑顔は俺の心に魔法をかけたのだ。