短志緒
俺は親父が好きそうな酒を準備し、
丁寧にコースターの上へのせる。
親父が一口、俺も一口。
「君はいつも仕事中に酒を飲むのか?」
「昔は毎日飲んでましたけど、今は裏方の仕事が多いので、店に出るときだけです」
「酒は好きか?」
「好きでなければこんな仕事できませんよ」
「……そうだな」
フッと一瞬だけ、親父が笑った。
ほんの一瞬だったけれど、この店で笑顔になってくれて嬉しかった。
なかなか結婚を認めてはくれないが、
俺はこの親父が結構好きだ。
頑固でちゃんとしていてしっかりしていて、
無愛想だがとても優しい。
俺の実父とは真逆の人間だ。