短志緒
ジャズの流れるこの店には他にも数人客がいた。
彼らを従業員のアヤに任せ、彼女の親父に集中する。
といってもずっと見つめているわけにはいかないから、一応周りの片付けなどをやりながら。
「君は」
親父が何か言ったから、一旦作業を中止する。
「はい」
「モテるんじゃないか?」
「……まぁ、はい」
否定しても仕方がない。
女遊びをやめても、未だに言い寄ってくる女は途切れていない。
「手を出そうとは思わないのか?」
なかなか痛いところを突いてくる。
昔は手当たり次第に手を出してましたとは言わない方がいいだろう。
「今は思いません」
「何故?」
「俺には奈々子さんがいるし、奈々子さんが離れていかないように口説くので精一杯で、そんな気にもなりませんよ」