恋の戦國物語
あたしは見とれていると、男の人は背にある矢を一本抜き取るのを見て、我に返る。
「ち、ちょっと待ってよ。あなたこそ、いきなり何なの?」
どうやら「次こそ射る」というのは冗談ではないのだと悟る。
震える手を押さえつけ、負けじとキッと睨む。
「…我が名は小十郎。片倉小十郎だ。怪しい者なら女でも容赦せん。どこの者だ」
小十郎かぁ…、?えっ…え!?
こ、小十郎!?
もしかして小十郎って、あの伊達政宗の重臣だった人?
まさかの同姓同名…。
考える暇はなく、小十郎はお構い無しにどんどん距離をつめてくる。
対してあたしは後ろへと引き下がるが、真後ろにあった木に背中がつき、行き場を失ってしまった。
…もしもよ?
もし、これが夢じゃなかったとしたならこの状況は本当に不味い。
とりあえず、身の危険を感じたあたしは、素直に応えることにした。
「あ、あたしはあ…愛って言う名前で…、え…と、これはセーラー服で、東京からきた…の」