恋の戦國物語


伊達政宗は床にどかっと座ると、右手で右目を覆った眼帯に触れる。

「さて。小十郎が来るまで待とうか。愛、そこに座れ」


ぴんと張りつめた空気の中、では、とゆっくりその場に正座をする。


暫く沈黙が続き、あたしはというと膝の上で拳を作りずっと俯いている。


伊達政宗が息をつき、独り言を呟く。

「…小十郎なぜこんなに遅いのだ…」


先ほどから何も喋っていないあたしは、顔をあげ、口を開いた。

「ま、政宗…さんは、その…どこからきたのかも分からないあたしを…部屋に入れちゃっていいんですか?」


実際、自分は間者でもないし、こんな事を聞いたら逆に疑われるだろう。

ただ、いざ本当に間者が現れたとき、この人が今のあたしにしているみたいにすんなりと部屋にいれてしまわないかと心配だったのだ。


「政宗でいい。そう改まるな。先ほども言っただろう?そなたの目に嘘はないと」


疑われるのだと承知の上で聞いた事だったが、伊達ま…じゃなくて、政宗は、先ほどと変わらない優しい声で目をじっと見つめてきた。

あたしは政宗の予想外な言葉にびっくりして、目を見開いた。


――何て優しい人なんだろう。


あたしの想像していた『伊達政宗』はもっと自己中心的な人だと思ってた。



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