恋の戦國物語
あたしは少しほっとして、緊張がすぅっと抜けていく。
「何があったのだ。味方になってやる、話せ」
目を一瞬閉じた瞬間、ふわりと温かい何かがあたしを包んだ。
目をゆっくり開ければ、政宗のちらっと見える逞しい胸板が目の前にあって、急に体中が熱くなる。
「ま、政宗っ!?」
バクバクする心臓が相手に聞こえていないかまで気になって、何が起こったのかも把握できていない。
第一、愛は男子と付き合ったこともなければ、抱きしめられるなどということすらない。
「そなたは体が貧弱だ。ちゃんと食べているのか?」
頭の上から降ってくる熱い吐息。
顔をあげられず、黙って俯いていると。
「政宗様、茶を用意して参りました」
…小十郎の声によってムードが一気に崩壊した。
声が聞こえた瞬間、政宗はあたしから少し距離をおくと、小十郎に「入れ」と言った。
「政宗様…顔が赤いですが大丈夫ですか?」
政宗と愛の間に茶と饅頭を差し出すと、小十郎は問う。
「何でもない。さぁ、話そうか」
政宗は顔の赤みがだんだんひいていき、本題に入ろうと、茶を一口ごくりと飲んだ。