恋の戦國物語
何が言いたいのかいまいち掴めず黙り込んでいると、喜多が冷静になって俺の肩を軽く押した。
「政宗様に何かあったら危ないでしょう。早く行きなさい」
喜多に少しきつく言われ、茶を溢さないよう入口から出る。
「かたじけない、喜多」
そういって、直ぐ様政宗様の元へと足早に戻る。
それにしても、あの女子…変な着物をしている割りには、正直とても可愛らしかった。
しかし、今までに政宗様目当てを含めどれだけ間者や女中を見てきただろうか。
間者はほぼ美人だからこそ怪しいのだ。
…今回は結構警戒しないといけないかもしれない。
ようやく政宗様の私室に着くと、片膝をついて声をかける。
「政宗様、茶を用意して参りました」
中から、静かな声で入れ、と聞こえる。
…まだ大丈夫そうだ。
ゆっくり襖を開けて中に入って2人の顔を伺う。
2人共の顔が赤い。
やはりこの女子、何かをしたのだな…。
「政宗様…顔が赤いですが大丈夫ですか?」
2人の間に茶と饅頭をおくと、政宗様をちらりと見る。
「何でもない。さぁ、話そうか」
政宗様はそういって咳払いをすると、入れたての茶を一口飲んだ。