恋の戦國物語
辛い現実
◇ 愛side ◇
いきなり抱き締められてあたしのパニックはまだおさまっていなかった。
無防備な政宗をガン見しつつ、小十郎からもらった饅頭を口にする。
「おいし…」
そういえば、向こうの世界では饅頭なんてあんまり食べたりしなかったっけ。
味わう様にちょっとずつ食べていると、政宗が口角を上げて自ら饅頭がのった皿を差し出してきた。
「そなたは美味しそうに食べる。よく食べる女子は、俺は好くぞ」
さらっと、聞いてて恥ずかしい言葉を言ってくる政宗。
半ばやけ食いになりつつ、ありがとうと政宗の饅頭を手にとる。
すると、ぱっと小十郎が政宗に耳打ちをして、政宗の斜め右後ろに立て膝を着くと、政宗が話かけてきた。
「あぁ、本題に入ろうか。そなた、愛は何処から来たのだ?」
頬張っているあたしは食べている手を止めて、ゆっくり話す。
「え…と、信じられないかもだろうけど…多分、未来から…きた」
小十郎はぴくっと肩を揺らし、政宗は眼帯のかかっていない切れ目な左目を見開いた。
「……」
自分の苦手な沈黙が続いたが政宗はまた目を細めて静かに呟いた。
「…左様か?多分、とはどういう事だ?」
小十郎はあたし達の会話を、目を閉じて静かに聞いている。