恋の戦國物語
「ここは…本当に戦国時代なのかが…まだ把握できてなくて」
そう。
もうここはだいぶ昔の世界だと確信したつもりだが、今は平成だと思いたいという自分が、まだ心のどこかにいる。
「…」
政宗は腕を組んで、何かを考えているかの様に俯いた。
「…そなたの時代では今を“戦国時代”と呼んでいるのか」
あたしは政宗から貰った饅頭を見つめながら、ゆっくりと頷いた。
しんと静まっているこの時間を使って頭をフル回転させ、ここの時代で最近何があったかを思い出す。
確か、小十郎と出会ったとき、今は1578年といっていた。
つまり…本能寺の変はまだ終わっていない。
織田信長は、まだ生きている。
幸村も生きているはずだ。
少し安堵して、政宗が口を開くのを待っていると。
「俺は、信じるぞ」
政宗はふっと息をつくと、にやりと笑いながら自信満々っぽそうに言った。
あたしも小十郎も、あり得ないという表情で目を見開く。
「本気ですか!?」
小十郎は声を張り上げ、政宗にさっと駆け寄る。
あたしが未来からきたとあんなに言っているのに、疑って止まない小十郎に少しむっとする。
小十郎のしつこさに政宗は怒るのかと思っていたが、そうでもなかった。