恋の戦國物語

「よろしく、お願いします」

喉に唾液か何かが詰まって、上手く言葉が出ない。

政宗は、あたしの顔色が悪いことに気づいたのか、近づいて隣に座ってきた。


「おい、大丈夫かっ?」

ちょっと気分が悪くなっただけなのに、すごく気にかけてくれる政宗は、やっぱり優しいなぁって思う。


政宗は、喜多と小十郎をほったらかしにしてゆっくり何度も背中を擦ってくれた。

「ありがと、ちょっと喉に何かが詰まっちゃって…」


喜多と小十郎は顔色を変えず、こちらを見ていた。


――政宗様がまた女子に…。


騙される、と言いたかったところだが。

政宗は実際、女癖は悪いが、今のところ騙されたことがないというのが事実。


本当に間者ではないのかと、小十郎は2人の後ろ姿を見つめながら口ごもった。

――…


ようやく呼吸も落ち着いて、政宗に「ありがと、もう大丈夫」と微笑む。


政宗は少し頬を赤らめながら、微笑み返してくれた。


喜多はほぅっと息をついて軽く微笑むと、ゆっくり立ち上がった。

「さあ、昼餉が冷めます。愛殿もご一緒にどうぞ」

「あ、じゃあお言葉に甘えます」

あたしがぱぁっと満面の笑みで即返事をする。


すると喜多さんも目を細めて襖を音なく静かにあけると、喜多、小十郎、あたし、政宗、と順々に部屋を出た。


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