恋の戦國物語

――…

「ふー、ごちそうさまでした!」

大満足のあたしは、満面の笑みで手をパンッと合わせる。

そばにいた女中さんも、何も言わずににこっと笑いかけてくれた。


…しんとした空気の中、食べ終えたあたしが勝手にこの部屋から出られるはずもなく、そわそわしながら不意に政宗の方をチラ見した。

政宗ももう少しで食べ終わりそうで、ついつい相手の手元に目線がいく。


指、どんだけ細長いのよ、この人。
しかも箸の持ち方も綺麗で器用そうだし。


あたしより一回りくらい大きそうな政宗の手に、少々ドキッとする。

ずっと見入っていると、政宗があたしの視線に気付いたのかちらっとあたしを見てきた。


「どうした。食べ足りなかったのか?」

にやっと口角を上げながら上から目線で言う政宗。


うわっ、何かよくわかんないけど腹立つ。


「失礼ね。そんなに食い気ないもん」


つん、とわざとそっぽを向くと、政宗も食べ終わったのか「ごちそうさま」と手を合わせる音がした。


女中さんが「お粗末さまでした」と一礼すると、政宗はゆっくりと立ち上がり、あたしも立つように促す。


喜多さんと小十郎も手を合わせると、小十郎が立ち上がった。

そして、小十郎は喜多さんに「では」と一言言うと、「行くぞ」とあたしの背中を押して、間もなく部屋を出た。



< 32 / 93 >

この作品をシェア

pagetop