恋の戦國物語

「あーいっ」

次の教科の用意をしていたあたしの背後から、もう聞き慣れているあの声が聞こえる。

「どうしたの、百合?」

途端に、机に手をついて身を乗り出してくる親友、百合(ユリ)。

百合は小学校からずっと仲が良くて、優しいから皆にも人気もある。

そして、あたしの大切な親友。

「行き先、東北地方に変わっちゃったね」

しゅん、と百合の長い睫毛が塞がり、綺麗な瞳を隠す。

「うん…でも、あたしは百合がそばにいてくれたら何処だっていいよ?」

下から百合の顔を覗きながら、にこっと笑うと、百合は何故か頬をほんのりピンクにしていた。

あー、可愛い。
女たるあたしでもドキドキするくらい…。

百合は顔をあげると、満面の笑みで

「ありがと、愛!絶対楽しもうね!」

と言ってあたしを抱きしめると手を振ったまま、教室をでていった。


…あの笑顔でどれだけの男子が惹かれては、振られて悲しんでいるのだろうか。

百合が出ていったドアを見つめ、あたしはついつい笑みをこぼした。


――さて、あたしもまた計画立て直さないと。


北海道に行くと思っている家族は、北海道限定の「白い愛人」というお菓子やら、ご当地マスコットやらの小物を買ってくるように頼まれてるからね…。


その日の夜、家族に行き先が変わったと伝えると、兄や弟が暴れたのは言うまでもない。


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