恋の戦國物語


あははと苦笑いをしていた束の間、政宗は眉を下げてはっきりと呟く。

「何故嘘を付く」

――ギクッ…

バレていることに、身を震わせた。

「何があった?」

政宗の優しい声にまた鼻の奥がツンとした。

心配してくれてることはわかる。

…でも、こんなに優しくしてくれているのに、帰れなくて泣いていた、なんて言えるわけがない。



「…おい、愛」

「やめて!…あたしは来たくもないこの世界に勝手にとばされて、命まで失いかけたのよ!?」

…何いってんの、あたし。

「お願いだから…もう、気安く聞かないでよ!」

…政宗にこんなこといって…何になるの…?


「…愛…」

「今は話しかけないでっ!」


あたしは、泣きながら叫ぶと、いてもたってもいられなくなって褥(シトネ)を頭まで被り、政宗に背を向けた。


いろいろな感情が混ざりあって、気持ちが悪くなってくる。


あたしは褥の中で静かに泣いた。
声は抑えられても、涙はこらえられない。


こんなの、政宗に八つ当たりしてるだけじゃん。


…政宗は絶対に怒ってる。

顔は見えないけど…こんなに言われて怒らない男なんて余程の事でないと、いないと思う。


元の世界に帰るどころか、あたしは…ここで死んじゃうんだ…。

< 40 / 93 >

この作品をシェア

pagetop