恋の戦國物語
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◇ 政宗side ◇
カバンとやらから何やらカラクリを取り出して、いきなり部屋を出ていった愛。
「政宗様。…追わなくてよろしいのですか?」
小十郎は、俺の考えていることを察したのか、追おうという体勢を一切とっていなかった。
俺が、今はそっとしておいてやろうと思ったことを小十郎は読み取ったからだ。
「何かあるのだろう。愛は間者ではない」
政宗はいつになく冷静で腕を組んで座っていた。
――…
愛が出ていってから、数十分する。
「…愛が戻ってこないのだが」
ぼそっと呟くと、端で俯いていた小十郎が顔をあげた。
さすがにこんなにも時間がたつと、心配になってくるのは当たり前だ。
「俺が様子を見に行きましょうか」
小十郎、立ち上がろうと、立て膝をつく。
「いや、いい。俺が行く」
このままおいておくわけにもいかないし、愛を探すように命令して小十郎を遣いたくない。
愛は逃げたりしない、絶対に。
俺はすっと立ち上がると、襖に手をかける。
「小十郎は…ここで待っていてくれ」
「御意」
音なく襖を開けて、廊下へ出る。
…何処へいった、愛…。
襖を閉めると、早歩きで愛の行った方向をくまなく探す。
…長い間走っていたのだろうから、そこ辺りに簡単にいるはずがない。
そういえば、ここを少し行けば綺麗な景色が見える窓のある行き止まりにつく。
…まず、そこを探す。