恋の戦國物語

愛は笑いながら「何もないよ」と言った。

でも、愛のこの笑顔には心がない。
…作り笑いだと言うことがすぐにわかった。

「何故嘘を付く」

気を遣いながら言ったつもりだった。
しかし、愛の表情は逆に崩れていく。

「何があった?」

もう一度、静かにそう続けた。

実際、自分の中で愛という者の存在は、どういうものなのか分かっていない。

しかし何かあるということに対して、放っておきたくないのだ。

…でも…やはり触れてはいけない事なのだろうか…。

そう戸惑いながらも名を呼ぶ。
「…おい、愛」

すると話しかけたのを遮るように叫び声が頭をつんざいた。

「もう、それ以上聞かないで!あたしはここに勝手にとばされて、命失いかけたのよ!」

…喜多以外の女子に初めて怒鳴られた――。

いや、今回は俺がそうさせてしまったのであろう。

愛は、息を乱すと、こう続けた。

「すごく…すごく辛い気持ちなのに、何があったのかなんて気安く聞かないでよ!」

「…愛…」
「今は話しかけないでっ!」

即座に謝ろうとしたら、終いには「話しかけるな」と褥に潜り込んでしまった愛。


…やってしまった。



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